【ブログ】「高額療養費の改正」で家計はどう変わる?

【ブログ】「高額療養費の改正」で家計はどう変わる?

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの田島です。

思いがけず病気やケガをしてしまったとき、一度にかかる医療費が大きいと、家計に大きな負担となってしまいますよね。そんなときに役立つのが「高額療養費制度」で、医療費の自己負担額をある程度抑える仕組みとして、多くの方の助けになっています。

2025年度の予算編成をめぐる政府方針で、2025年8月から高額療養費制度の上限額が引き上げられることになりました。さらに、2026年・2027年には年収区分がもっと細かく分かれ、2段階で負担が増える見込みです。

今回は、そんな高額療養費制度の改正について、ファイナンシャルプランナーの視点から書いてみようと思います。医療費と収入減少が同時に起きた場合の家計への影響など、具体的なケースを挙げながらご説明しますので、ぜひ最後までご覧いただければ嬉しいです。

1. 高額療養費制度とは?

私たちが加入している公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)では、基本的に治療費の3割を自己負担することになっています。でも、重い病気や大きな手術が必要になった場合、その3割負担だけでもかなりの金額になることがあります。

そこで「高額療養費制度」では、所得(年収)や年齢に応じて、1か月あたりの自己負担の上限を決めています。もし医療費がその上限を超えたら、超過分はあとから公的保険が補填してくれる仕組みです。これのおかげで、思わぬ高額な医療費に直面しても、家計が極端に圧迫されにくくなっています。

2. 2025年8月からの新たな上限引き上げ

今回、新しく決まったのが、2025年8月からの自己負担上限額アップです。年収370万円以上の中~高所得層を中心に、これまでより数千円から数万円程度、上限が引き上げられる見込みです。たとえば、年収370万円~770万円の方は、ひと月の上限が約8万8200円になるとされています。

年収区分月あたりの上限額 2025年8月~上昇幅
住民税非課税約3万6300円+900円
~約370万円約6万600円+3000円
約370万円~約8万8200円+8000円余り
約770万円~約18万8400円+2万円余り
約1160万円~約29万400円+4万円近く

これによって、高所得の方だけでなく、中程度の年収の方でも、今まで以上に医療費負担が重く感じられる場面が増えるかもしれません。特に、何度も通院したり長期療養を余儀なくされたりするケースでは、家計への負担が増える可能性もあります。

3. 2026年・2027年にかけての段階的改正

さらに、政府は2026年・2027年にかけて、年収区分をさらに細かく設定し、2段階にわたる上限額の引き上げを行う計画を公表しています。たとえば、年収650万円前後や、年収1650万円以上といった新しい区分を設け、それぞれの月額上限を大きく上げる方針です。

  • 年収650万円~770万円: 最終的に13万8600円ほどまで上限が上がる
  • 年収1650万円以上: 44万4300円ほどの上限になる

「現役世代の保険料負担を軽減する」とうたわれている一方で、慢性疾患やがんなどで継続的に治療が必要な方には、家計が厳しくなる結果につながる可能性があります。

そして、「たくさん稼いでも、結局は社会保険料が高く、病気になったときの負担も増える」この構造が固定化されてしまうと、「働く意欲の減退」「フリーランスへの移行」「受診控え」など、社会全体にとっても良くない影響が出る可能性があります。

今後の制度改正の動きを注視しつつ、個人レベルでできる対策を取ることが、これからの時代を生き抜くために必要な視点となりそうです。

4. 家計への影響と懸念

今回の改正で、高額療養費制度の負担上限が上がると、医療費の負担だけでなく、収入減少リスクまで重なるケースが懸念されます。たとえば、長期入院で休職したり退職をせざるを得ない状況になった場合、医療費はかさむのに収入は減ってしまうという“ダブルパンチ”になってしまうのです。

実際、患者団体からは「受診をためらったり、治療を続けられなくなったりする恐れがある」との声が多数挙がっています。高額療養費制度は本来、経済的な理由で治療を断念しなくて済むように設計されていますが、今回の引き上げでセーフティーネットとしての機能が弱まるのではないかとの懸念が広がっているんです。

5. ファイナンシャルプランナーの視点:リスク対策

(1) 緊急資金の確保

高額療養費制度の上限が上がっても、ある程度の貯蓄があれば、一時的に医療費を支払う際の安心感が違ってきます。最低でも数か月分の生活費を貯めておくことで、医療費がかさんだときのキャッシュフローにゆとりを持てます。

(2) 傷病手当金・所得補償保険の活用

会社員であれば「傷病手当金」という制度があり、休業中の収入をある程度カバーしてくれます。一方、自営業やフリーランスの方は対象外の場合が多いので、所得補償保険などでしっかり備えておくことをおすすめします。医療費も収入も同時に減ってしまわないように、複数の制度や商品を組み合わせましょう。

(3) 予防医療と定期的な健康診断

長期の療養が必要になる前に、病気を予防するのが最も大切です。定期的に健康診断を受けたり、生活習慣を見直したりすることで、重症化を防ぎ、高額な医療費が発生する機会を減らせます。

6. 具体的なケーススタディ:医療費負担と収入減少のダブルパンチ

下記のシミュレーションは、標準報酬月額35万円(年収約420万円ほど)の会社員の方が、大きな手術や長期入院を伴う治療を受けた場合を想定したものです。2025年8月以降の新しい上限額を前提に考えています。

ケースA:1か月あたり総医療費が100万円の場合

  • 総医療費:100万円
  • 自己負担(3割負担):30万円
  • 2025年8月以降の自己負担上限(年収370万円~770万円想定):約8万8200円
  1. まず医療機関に30万円を支払いします。
  2. 高額療養費制度を利用すると、最終的な自己負担は8万8200円程度で済みます。
    • 実質的には30万円 – 8万8200円 ≒ 21万1800円があとから戻る形です。
ケースAの収入減少:傷病手当金
  • 通常の月収:35万円(手取りは約28万円想定)
  • 傷病手当金:35万円×約2/3=約23万円
  • 差額:月5万円前後の収入ダウン(手取りベースではさらに大きくなるかもしれません)

月8万8200円の自己負担に加え、収入が月5万円ほど減ると、実質的には月14万円前後の家計インパクト(医療費+減収)となる可能性があります。入院期間が長引くと、この状況が何か月も続くため、貯蓄の取り崩しや生活費の大幅な見直しが避けられなくなることも。

ケースB:複数月にわたる入院(脳卒中など)

  • 総医療費:月100万円×3か月=300万円
  • 自己負担上限(1か月あたり):約8万8200円
  • 3か月合計の自己負担:約26万4600円

脳卒中や大きなケガでリハビリが必要になり、3か月連続で高額療養費制度を使ったとしても、合計で26万円以上の自己負担が発生します。しかも、傷病手当金で収入が3か月連続して減ると、15万~20万円ほどの収入減になるケースもあります。その結果、3か月で40万円以上の家計ダメージが出る可能性があります。

備考:職場や自治体による差異
なお、高額療養費制度の運用は全国共通のルールが基本ですが、加入している健康保険組合やお住まいの自治体によっては、独自の付加給付や助成制度を用意していることがあります。たとえば、大企業の健康保険組合では自己負担分をさらに補う仕組みがある場合もあり、実際に支払う金額が思ったより少なくなるかもしれません。こうした差異を確認することで、さらに医療費を抑えられる可能性があります。

7. まとめ

2025年8月からスタートする高額療養費制度の負担上限引き上げは、2026年・2027年の段階的改正も含めて、多くのご家庭に関わる非常に重要な改正です。「社会保障費の抑制」や「現役世代の保険料負担軽減」が目的とされていますが、長期療養を余儀なくされる患者さんには大きな経済的負担になることも。

特に、医療費負担と収入減少が同時に起こるリスクは、家計への影響がとても大きいと考えられます。ファイナンシャルプランナーとしては、医療費に対しての備えだけではなく、収入が減った分もフォローできる体制を整えることを強くおすすめします。
何よりも、定期的な健康診断や予防医療を習慣にして、重い病気を早期に防ぐことも重要ですよね。

  • 貯蓄と保険の組み合わせ:高額医療費に対応する備えに加え、収入が途絶えたときの生活費をどう補うか、一度見直してみましょう。
  • リスク対策は自己責任:社会保障制度はこれからも変わる可能性が高いので、公的保障だけに頼るのではなくリスク対策は自己責任と捉え、できることから始めましょう。

早めの対策をとることで、もしものときも家計をしっかり守りやすくなります。今回のケーススタディなどを参考に、ぜひご自身やご家族の状況に合ったリスク管理の方法を考えてみてくださいね。

生命保険の無料相談も対応しています

生命保険・損害保険合わせて45社、保険会社の募集人資格を持っていますので、最新情報もお伝えできます。私の場合は、どうなのかな?この備え方であっているかな?など、お気軽にご相談くださいね。